※ RCP2.6: IPCCの第5次評価報告書(2014年発表)は、今後100年間にどれくらい平均気溫が上昇するか4つのシナリオを示しているが、4つのうちで最も気溫上昇が低いもの。
気候変動に関する取り組みの経緯
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フジクラグループ環境長期ビジョン2050の4つのチャレンジ
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フジクラグループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に公表した提言に賛同しました。気候変動がもたらすリスクと機會を分析し、ステークホルダーの皆様に情報開示していくことで、持続可能な社會の実現に貢獻します。
また、事業活動に要する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が參加するイニシアチブであるRE100にも加盟しました。2050年に工場CO2総排出量ゼロを掲げ、その一環として2050年に電力の再生可能エネルギー化100%を目指し、中間目標として、2030年に45%、2040年に90%を設定し、達成へ向けたロードマップを作成、遂行しています。
さらに、パリ協定(世界の気溫上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する溫室効果ガス削減目標に対し、參加を承認するSBTi(Science Based Targets initiative)の認定取得に向け、科學と整合した目標を設定することをコミットしています。
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フジクラグループの気候変動ガバナンスは、サステナビリティ戦略會議の環境側面部會である地球環境委員會(委員長は環境擔當役員)がグローバルに統括しています。地球環境委員會は、気候変動を含む環境経営に関する審議決定機関であり、各年度および中期目標の策定を行い、活動推進狀況をモニタリングするとともに環境擔當役員の承認を受け、サステナビリティ戦略會議に報告しています。重點テーマには専門部會を設け、施策立案や対策の橫展開など、さまざまなサポートを行っています。
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2021年度の取り組み
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フジクラグループでは、低炭素経済に移行する過程で起こりうるリスクと機會の特定を進めています。気候変動がフジクラグループの事業成長にどのような影響を與えるのかを分析するために、國際研究機関(OECD、IPCC)等の長期予測や社會的な関心事、顧客からの気候変動対応要請などを踏まえています。特定したリスクは適宜見直しを行っていきます。
分類 | 気候変動リスク | 今後の対応 |
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2℃シナリオ (移行リスク) 短期?中期 |
【政策?法律リスク】 ?炭素稅の導入など各國地域におけるCO2排出規制強化 - 炭素稅による財務への影響を試算 ?顧客や操業國からの溫室効果ガスやカーボンフットプリントの削減要請義務 |
?環境長期ビジョン2050に基づく、再生可能エネルギー100%へのロードマップによって、徹底した省エネ、再エネ導入、クレジット等の活用を進める。 ?事業活動における再生可能エネルギー利用の推進(本社?工場など) ?RE100加盟やTCFD 賛同による対応強化?ESG評価指標の定期的なモニタリングと対応 ?SBTi(Science Based Targets initiative)の認定取得 |
【技術リスク】 ?既存技術のディスラプト ?製品製造時のエネルギー使用量の最小化や再生可能エネルギー利用等の要求 |
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【市場リスク】 ?商品、サービスに対する需要の変化 ?顧客や社會からの気候変動対策による一時的な設備投資コストの増大 ?気候変動関連要因による原材料価格の上昇や調達先の分散 |
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【評判リスク】 ?顧客や投資家、各種評価機関からの気候変動に関する情報開示と対応要請 |
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4℃シナリオ (物理リスク) 中期?長期 |
【急性リスク】 ?洪水や大型臺風など自然災害による操業への影響 - 生産設備に被害を受けた場合、生産能力の低下や設備修復など、業績への影響 - サプライチェーンの分斷などによる生産計畫への影響 →フジクラグループは2011年にタイ洪水によりグループ會社が甚大な被害を受け、復興まで5年を要した |
?対象拠點の防災対応 - 2011年のタイ洪水被害を教訓に、BCPの観點からも拠點の分散化や事業所周辺の防水壁の建設などを実施 ?事業所の法面整備や海辺に近い工場における高潮、津波対応 *洪水や海面上昇で影響を受ける國內拠點 本社、フジクラハイオプト(東京都江東區木場)、沼津熔銅、西日本電線(大分県大分市春日浦) ※各行政のハザードマップを調査 |
【慢性リスク】 ?気溫上昇等による操業地域で働く社員の健康配慮 ?降雨量増加による従業員の安全性の確保 ?將來的な海面上昇における操業への影響 |
各事業 | 社會動向 | 機會 |
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エネルギー | ?経済成長、都市化、人口増加により、途上國を中心にエネルギー需要、特に電力需要が増加。 ?デジタル技術の活用による、電力供給の安定化、効率化、2℃シナリオでの省エネ進展 ?企業、個人などのエネルギー供給?需要雙方の多様化、2℃シナリオでの再エネ増大 ?4℃シナリオ下における自然災害の増加懸念 ?無電柱化推進法への対応(防災など) |
【市場】 再生可能エネルギーの普及拡大 【製品/サービス】 グリーン関連製品拡大 【エネルギー源】 高効率電力システム関連製品 ?デジタル技術活用の推進 【レジリエンス】 電線/ケーブル等社會インフラのレジリエンス強化 |
情報通信 | ?デジタル化の進展により、データ流通?蓄積?解析量が指數関數的に増大 ?ビッグデータ、IoT、5G、AIなどのデジタル技術を活用した新サービス事業が急速に拡大 ?CASE/MaaSの進行 ?ミリ波(無線通信) ?4℃シナリオ下での自然災害対応懸念 |
【製品/サービス】 高密度/細徑構造の光ケーブル(SWR?/WTC?)を中心とするソリューションの展開 【市場】 グリーン関連製品拡大(2018年度:210億円) ?高効率ITシステム関連製品 ?デジタル技術活用の推進 ?社會インフラとしての通信線レジリエンス強化 |
エレクトロニクス | ?産業用ロボットの増加 ?醫療用製品への參入 ?車載用電子部品の増加 ?ミリ波対応部品の増加 |
?CASE対応研究開発の推進 ?デジタル技術活用の推進 ?グリーン関連製品拡大(2018年度:165億円) ?産業用、自動車用コネクタの需要増 |
自動車電裝 | CASEの進行 ?電子部品の増加に伴うWHの増加 ?2℃シナリオでのEV化の進展 ?WH軽量化の需要増加 |
?軽量化ワイヤハーネス ?CASE対応研究開発の推進 ?自動車電裝事業に情報通信やエネルギー事業などの知見を組み合わせ、EV 関連の新規事業創出 ?ワイヤハーネス以外の自動車部品やEVへの対応強化 ?グリーン関連製品拡大(2018年度:702億円) |
不動産 | デジタル技術活用の推進 ?ZEBなど環境影響配慮のニーズ |
?環境配慮を要求するテナントの獲得と維持 |
特定したリスクに対する対応や今後の検討は、環境擔當役員である常務取締役が委員長を務めるフジクラグループ地球環境委員會にて承認?決定しています。CSR 重點方策で定めた活動計畫の実績報告とあわせて、フジクラグループ地球環境委員會で情報の共有と対応案の検討と承認を行い、サステナビリティ戦略會議へ報告しています。また、フジクラグループ各拠點の使用電力、水、廃棄物などの環境データを入力?評価?分析し、年2回フジクラグループ地球環境委員會にて実績確認、計畫見直しなどを行っています。
フジクラグループでは、地球環境保護の観點から環境配慮型製品の開発を推進することを目的としてグリーン関連製品認定制度を設けています。各事業部門より申請された製品環境アセスメントチェックシートをグリーン関連製品管理委員會で審査し、基準點以上の製品をグリーン関連製品として登録を行っています。製品環境アセスメントチェックシートは2011年に制定され、定期的に更新されています。グリーン関連製品管理委員會は、研究開発部門のメンバーを委員長に、各事業部門メンバーを委員として人選されています。なおグリーン関連製品の認証は、ISO14021に定める環境ラベルタイプⅡを採用しています。
2021年度は、グループ會社全體で新たに54件のグリーンマインド製品が登録され、またRoHS対応済みのFPC現行製品約3000件を、追加登録いたしました。これにより、売上高に占めるグリーン関連製品(グリーンマインド製品とグリーン製品の合計)の比率は55%に達しています。
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【用途】FTTxや、大規模データセンタ向けの高密度光ケーブル
【環境配慮】単心の光ファイバが間欠的に接著されたSWR?により、リボン形狀を容易に変形させることが出來ます。これにより従來ケーブル化する際に必要だったスロット保護が不要となり、ケーブル自體の外徑や重量を最大60%削減することができました。また、SWR採用の光ケーブルでは、使用する光ファイバ素線を250 μm→200 μmと細徑化することによりケーブル外徑を拡げることなく実裝可能な心數を増やし、且つ軽量化も実現しました。更にSWR?におけるファイバピッチを250 μmファイバと200 μmファイバで同じとすることにより、相互の融著接続を可能とし、敷設作業時における作業性の向上にも寄與しています。
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【用途】車載大容量パワーエレクトロニクス向けヒートパイプ
【環境配慮】ヒートパイプ內部の焼結銅粉の配置を最適化することにより、最大熱輸送容量が20%以上、大幅に向上しました。これにより、同じ熱輸送容量であれば必要なヒートパイプ數を削減することができ、また同じ容積であればより効果的に冷卻を行うことが可能となります。
【用途】産業用レーザ加工
【環境配慮】高出力ファイバレーザの構成要素となるファイバレーザモジュールを小型化することにより、最終製品であるキャビネット型高出力ファイバレーザの小型化を実現しました。ファイバレーザモジュール內の部品配置や設計、構成部品を見直し、レーザ出力を上げつつフットプリントを40%削減しました。その結果、このモジュールを複數臺搭載して構成される高出力ファイバレーザ加工機において、従來の同出力製品と比較して體積を60%,重量を40%削減しました。また使用する部品の見直しと設計の最適化により、消費電力を20%削減しました。これにより、年間の稼働時間を2000時間と仮定した場合、年間の消費電力は一臺あたり10,800kWhの削減が可能で、年間約6tのCO2削減に貢獻します。
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2021年度は、気候変動に起因すると思われる現象による、直接的な事業への影響は認められませんでした。
將來の被災リスクに備え以下の投資をこれまでに行ってきております。
フジクラ佐倉事業所は、過去に豪雨による法面崩落事故を経験しました。近年、気候変動により回數が増している豪雨に備え、2016~2019年度にかけて法面整備を進めてきました。(費用:5.8億円)
西日本電線の大分工場は、大分灣に面しており、臺風時の高潮、津波による被災リスクを抱えています。これに対応し、2017年度、500名の従業員が避難可能な新事務棟を建設しました。(費用:4.6億円)
佐倉事業所の法面工事 |
西日本電線の津波避難タワー |